天井スピーカーが選ばれるのはなぜ?店舗BGM用オーディオ機器の選び方

2022.08.19音響

快適な店舗のイメージ

センスのよいBGMが良い音で鳴っているお店は、上質で快適な印象を与えるとともに、お客さまも心地よくお食事やお茶、お買い物をすることができます。さて、そのようなBGM環境を作るには、どのようなオーディオ機器を選べばよいのでしょうか?

スピーカーの選択

音を鳴らすにはスピーカーが必要です。店舗内では、できるだけ目立たないスピーカーで良い音を鳴らしたいものです。
よく使われるのが、天井埋め込みスピーカー(天井スピーカー)です。天井スピーカーは目立ちにくく、場所も取らないという特徴があります。
天井スピーカーは大きくわけて、低音から高音までをしっかり再現し、音楽再生に向いている高品質な製品と、館内放送の声や火災時の警報音など、アナウンス用途として使用する製品の2種類があります。

BGM用には、音楽再生に向いている高品質なものを選択するとよいでしょう。

スピーカーの配置や数

スピーカーの音が十分に聞こえる範囲をカバーエリアといいます。多くの天井スピーカーは、スピーカーから真下に向かって一定の角度の円錐状に音が広がります。

カバーエリアを上から見た図

スピーカー本体の仕様を確認し、天井の高さと人の耳の高さ、またリスニングエリアを考慮して、充分にカバーエリアを満たす数を配置することが望ましいです。

記事「音響設備(拡声設備)を備えた会議室の天井埋込スピーカー設置について」参照

たとえば、BOSEのDM2C-LPというスピーカーでは、「公称カバレージ角度(1~4 kHz):150°円錐状」と記載されています。

これは150°で音が広がっていくということですが、1~4kHzの周波数帯域での仕様です。
一般的に人が聞き取れる音の周波数帯域は20Hz~20kHz(20,000Hz)と言われています。
音楽再生においては4kHzまででは物足りない数値です。せめて10kHzくらいまでは考慮しておきたいものです。音は高域になればなるほど指向性が強くなるため、カバーエリアは狭くなります。

DM2C-LPの仕様書には、「公称カバレージ角度(1~10 kHz):140°円錐状」とも記載されています。よって、140°で配置を検討する方がよいと言えます。

カバーエリアを横から見た図

天井から140°で音が広がり、天井から耳の高さまでを2mとした場合、およそ8mごとにスピーカーを配置するような計算となります。

BGMにはモノラル再生

家庭のオーディオでは、2本のスピーカーを使って、それぞれが左側の音と右側の音を担当する「ステレオ再生」を行っています。イヤホンでも左耳用と右耳用が決まっています。
左右を分けることによって、音楽を再生するとボーカルは真ん中から、ピアノは左から、ベースは右から、など聞こえてくる位置が異なる効果が得られます。これにより、立体感や臨場感を生み出す再生方法が「ステレオ再生」です。

BGMでは、天井スピーカーの数が2本より多くなる場合がほとんどでしょう。そして、音を聞く人の向きは前向きだったり後ろ向きだったり横向きだったりと一定ではありません。
よって、「ステレオ再生」をしても方向性が正しく再現できないため、左右の音を混ぜ合わせた「モノラル再生」を行うことが一般的です。

アンプの役割と仕様

スピーカーから音を鳴らすためには、アンプが必要です。アンプはCDプレーヤーやラジオチューナーのような機器からの微弱な信号を増幅させて、音として認識できる空気の振動を生み出す強さの電流に変え、スピーカーに送ります。

記事「音響設備のプロおすすめ!業務用、店舗BGM用スピーカー・アンプ」参照

一般的に、家庭用のアンプはステレオ再生用にスピーカーが2本つながるようになっています。また、ローインピーダンス仕様となっており、比較的短いケーブルで6Ωや8Ωなどのスピーカーをつなぎます。
一方、BGMに使うアンプはハイインピーダンス仕様のものを選択します。
ハイインピーダンス仕様では、スピーカーにトランスを取り付け、高い抵抗値とすることで長距離伝送が可能となり、たくさんのスピーカーを接続できるようになります。

通常使われるのがハイインピーダンス仕様の100Vラインと呼ばれる接続です。

たとえば、100Vラインでの出力容量が30Wの性能のアンプがあれば、1Wのスピーカーなら1~30個、10Wのスピーカーなら1~3個つなぐことができます。スピーカーのW数の合計がアンプの出力容量以内であれば、1Wのスピーカーと10Wのスピーカーを混在させても問題ありません。
※ただし、実際には安全のため、スピーカーのW数の合計の1.2倍がアンプの出力容量以内に収まるようにします。

1台のスピーカーから鳴る音量はスピーカーのW数で決定するため、アンプの出力容量以内であればスピーカーを増減しても一定となります。
このように、多くのスピーカーを接続したい場合、ハイインピーダンス仕様が便利です。

アンプとスピーカーのW数

同じW数のスピーカーでも、機種によって性能が異なるので、同じ音の大きさ(音圧)で鳴るとは限りません。
たとえば、BOSEのDM2C-LPの仕様書には、「感度(SPL/1W@1m):84dB」と記載があります。通常、このように1Wで鳴らしたときにスピーカーから1mの距離で得られる音圧が記載されています。
基本的に、音は距離が倍になると6dB減衰します。これは、感覚的には半分の大きさとなります。一方、W数を倍にすると3dB増加します。
DM2C-LPであれば1Wのまま2mの距離での音圧は78dB、4mになると72dBです。
2Wで鳴らした場合87dB、4Wなら90dBということになります。(DM2C-LPの場合、実際には、2.3W、4.5W、9Wの接続が可能です)

また、スピーカーから音を鳴らしていない状態における周囲の雑音(暗騒音と言います)によっても必要な音圧が変わります。
一般的に暗騒音は、図書館の中だと40dBほど、静かな事務所で50dBほどと言われています。
スピーカーからの音は周囲の雑音より6dB以上高くしておくと良く聞こえます。

周囲の雑音が50dBの静かな空間内を考えてみましょう。

天井の高さが3mで人が座ったときの耳の高さを1mとすると、2mの距離で音を聞くことになります。2mの距離で56dB以上の音圧が必要です。
DM2C-LPの1Wのときの2mの距離での音圧は78dBでした。56dBを超えているので1Wで鳴らせばよい、ということになります。このスピーカーには1Wの設定がないので、一番小さい設定の2.3Wでよい、と言えます。
ただし、これはスピーカー直下の場合です。遠い箇所ではスピーカーから4.5mほどの距離になります(縦2m横4mにて三平方の定理から計算)。およそ13dB減衰するので、1W時で65dBとなり、スピーカーから離れた位置でも56dB以上確保できることがわかります。

距離による減衰の計算

そして、このスピーカーを何台設置するかによってアンプを決めます。
たとえば、6台必要となれば、2.3W×6=13.8W。安全上1.2倍として16.56W。よって、20Wや30Wの出力容量を持つアンプを選定すればOKです。

家庭用機器と業務用機器の違い

家庭用のオーディオ機器は主に高音質を追求しています。業務用は音質も重要ですが、加えて堅牢性・耐久性を重視していると言えます。
お店のBGM用では一日12時間の再生を毎日繰り返す、などの使い方になります。このような使い方に耐えうる性能が必要となるため、業務用の機器を選定しましょう。

まとめ

  • スピーカーは、音楽再生に向いている天井スピーカーでハイインピーダンス対応のものがオススメ。
  • スピーカーは、カバーエリアと天井の高さから計算して、まんべんなく配置。
  • アンプはスピーカーの合計W数×1.2の出力容量を持つものを選びましょう。

おまけ(音源について)

音楽を鳴らしたい場合、CDプレーヤーやスマホの音楽アプリなどが音源として考えられます。しかし、これらをBGMに使う場合には注意が必要です。
音楽にはそれぞれ著作権があり、JASRACがその権利を管理しています。無断で使用すると著作権侵害となりますので、手続きしてから使うようにしましょう。スマホのアプリからの音源の場合、アプリ利用料に含まれることもあります。
きっちりと手続きを行えば、お気に入りの曲をBGMとして使うことが可能です。
詳しくはJASRACのウェブサイトやアプリの配布元のウェブサイトなどをご確認ください。

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